【書評】決算書の9割は嘘である。初心者でも危険な企業を見分ける方法は?

元国税調査官による決算書の嘘を見抜けるポイントが書かれてある本です。

決して脱税テクニックの本ではありませんのでそこはご注意下さい。

決算書が読めなくてもとてもわかりやすく書いてあるので、スムーズに読み進めることができます。

それでは、要点をまとめつつ感想を書いていきます。

脱税と粉飾決算は真逆

読むまで全く知りませんでしたが、粉飾決算というのは売上や利益を大きく見せる行為で、売上や利益を小さくする行為は一般的に粉飾とは呼ばないみたいです。

粉飾決算の反対が脱税。脱税とは税金を逃れるために利益を減らす行為です。

つまり、よくニュースになるような上場企業の粉飾決算というのは、利益を大きく見せようとして決算書に化粧をしているわけです。

ここでわかるのが、粉飾決算は、株主を向いて経営を行っている上場企業に多く、株主を気にしないでいい中小企業や零細企業に脱税が多いということです。

粉飾するということは、利益が多くなり、本来は払わなくてもよかった税金までも払うことになります。そこまでして粉飾をする理由は株価を伸ばし市場から資金を調達したいからです。

企業を知るには株主構成がもっとも重要

創業者が経営の実権を握っている企業は、粉飾よりも脱税が多くなる傾向にあります。なぜなら、こういう企業は、収益を上げて株価を上げる必要はあまりないからです。大株主と経営者が同じなのだから、経営者は株主の機嫌を取る必要はありません。だから、無理に収益を出すよりも、健全な経営をしようとします。また下手に利益を出して、税金に取られるよりも、経営者の報酬を厚くするなど、経営者が自分を利する会計を行おうとするのです。
引用:決算書の9割は嘘である

いわゆる同族企業に脱税が多くなる傾向にあるようです。反対に銀行などの支配下にある企業では一生懸命に収益をあげようとして脱税よりも粉飾の方向で会計操作を行います。

こういった点が株式会社の株主構成を見れば、わかるというわけです。

上場企業の株主構成を調べる方法は「EDINET」というサイトで会社名を検索し、「大株主の状況」というのを見るだけです。

誰でも簡単に見れる情報なので、興味のある上場企業は時間がある時に調べてみると面白いかもしれません。

3年分以上の決算書を見よう

本書で何度も言われていたのが、決算書とは企業が自分で作る成績表なので、1年分の決算書を見たところで嘘を見抜くことはできないということです。

3年分以上の決算書を用意し、主要科目を対比していくことで、おかしな部分というのがわかってきます。

国税調査官の中には会計知識を有していない調査官も多くいるみたいですが、それが業務の妨げになることはないようです。

なぜなら、不正をするポイントというのは大体決まっており、そのポイントさえわかっていれば企業がどのように決算書に化粧をしたのかがわかるからです。

国税調査官には時間のない中で瞬時に不正を見つける能力が問われるようです。

国税調査官に課せられるノルマ

具体的なノルマの数字というのは掲げられるわけではないようですが、組織内に、多く追徴課税させたものが出世できるという暗黙のルールがあるようです。

確実に多く税金を取るために、国税調査官がまずやらなければならないことは粉飾決算をしている決算書を除外することです。

粉飾決算というのはさきほども書きましたが利益を意図的に上方修正している決算書のことです。ここに税務調査に入ってしまっては、下手をしたら税金を還付するはめになってしまうんです。

これだとマイナスポイントになるので、調査官は脱税をしていそうな企業に目をつけて大きく回収できそうなところに税務調査に入ります。

赤字企業、黒字企業があった場合は黒字企業を調査するみたいですが、最近では実質黒字の赤字企業が多くいるため、赤字企業にも怪しいところには税務調査に入るようです。

悪いことはできませんね。

まとめ

その他にもソニーやトヨタの決算書のカラクリ、楽天が赤字になっていた理由、粉飾決算の実例などが社名を出してわかりやすく説明されています。

決算書を勉強し始めたけど、見るポイントがわからない、もしくは、株の勉強を始めたけど企業の内情を読み取りたい、といった方にとてもマッチする本だと思います。

元国税調査官の本ということで他の人には中々書けない内容になっているので、一読の価値ありです。