【書評】ビジネススクールでは教えてくれないドラッカーの感想要約まとめ

またまた新書です。タイトルは「ビジネススクールでは教えてくれないドラッカー」

慶應の教授が書いた本で、少し難し目でした。

本を通して言いたいことは一貫していたので、それらの要約と印象に残っている部分、ドラッカーから学べることを書いていきます。

アメリカであまり読まれていないドラッカー

どうやら経営学の本場、アメリカではドラッカーのような人に焦点をあてたマネジメント方法が相手にされず、数字を用いた経営学の科学化が盛んに行われているみたいです。

前回の書評ても書きましたが、ここでも起こるのが偉い人が必ずしも正しいことを行っているわけではないということです。

・アメリカの大学なら正しい勉強方法を教えているに違いない
・海外で学んできたのだから最新の、最も結果にコミットする経営学を学んできたに違いない

などなど、実情を知らずに偏ったバイアスがかかるのは本当に恐ろしいですね。

作者はそういった今の現状に苦言を呈し、数字ベースの経済合理的なマネジメントと人に焦点をあてた人間主義的マネジメントの両輪があってはじめて企業は長期的にも正しく生き残っていけると言っています。

経済合理的なマネジメントだけではダメな理由

正直、僕は数字ベースの経営の方がうまくいくのでは?と思っている方です。この本を読むまではですが。

いわゆる数字に置き換えられない部分、抽象的な部分があればあるほど結果も有耶無耶になってしまう恐れがあると思ってました。

経済合理的なマネジメントだけではダメな理由は合理性を追求するあまり、安全性や正当性が放棄されるからです。

完全な安全性、完全な正当性を追求するよりも、適当なところで安全性や正当性を放棄したほうがコストがかからず合理的だからです。

利益だけを重視するということは、不正も見過ごしてしまう組織になりかねないということてす。(不正を止める合理性が見出だせないため)

そうなると短期的には利益を出せたとしても長期的には利益は出せず、その結果そういった企業は長くは続かないということです。

ドラッカーがアメリカで通じない理由

ドラッカーの本には数字をもとにした実証ケースがほとんど書かれておらず、経営学というよりも哲学にカテゴライズされるような切り口のためです。

ただし、作者はこれに反論しています。以下は本の中で語られていた反論です

ある仮説を実証する場合、証明したい命題とそれを否定する命題を設定します

・すべてのカラスは黒い(証明したい命題)
・すべてのカラスは白い(否定する命題)

すべてのカラスが黒い、というのは一見すぐに証明できそうに感じますが、この世にいるすべてのカラスを調べることは物理的にできないので文字通り「すべてのカラスは黒い」と証明することはできません。

そこで登場するのが、否定する命題です。「すべてのカラスは白い」ということを否定していけば間接的に「すべてのカラスは黒い」という命題を正当化できるというわけです。

著者は、これが経営学の世界でよく使われている手法であり、結局「実証されたかのように見せているが実証はできていないため」、統計的に実証されていないドラッカーマネジメントを無意味とは言えないと言っています。

ちょっと屁理屈のようにも見えますが、それくらい今のアメリカの経営学が統計学の乱用で作らた机上でしか通用しないもので溢れているようです。

ドラッカーは自律的で自由な組織を望んだ

これはドラッカーの人生、歴史的背景に深く関わっていました。

自身の育った国ウィーンが全体主義のナチスに占領されてしまったという経験が、自由な産業社会を形成しないとすぐに全体主義が台頭してくるという恐れを抱かせていたようです。

ドラッカーの提唱する企業経営とは、自身で新商品を作りそれを顧客に問い、その商品が受け入れられて新しい社会ができあかっていくという、顧客の創造を主としたものでした。

さらに自律的で自由であるのは経営者だけでなく、中堅社員や平社員も一律に自分で考えて動くというのをよしとしました。

自律というのは他律という、自身の外にあるものが原因で動くことの反対語として使われています。

命令されたからやる
みんながやってるからやる
流行ってるからやる

のではなくて、自身がどうしたいのか。自身はどうすべきと思っているのか。

人間には他律的に動くという側面が多くあるが、自律的に動けることこそが人間としての尊厳を有していると言えるという。

これもナチスに繋がるところで、出世したいからなんでもやるという他律的行動を起こしてしまうと善悪の区別なく、不正も倫理に反することもなんでも行ってしまうようになります。

そんなのは、人間の姿ではないと強く否定しているのです。

全員が自律的に動いた場合、組織はうまくいかないのではないか?

とお思いになるかもしれませんが、ドラッカーのいう自律とはみんなが自由に動くのではなく、それぞれが正しい判斷をくだせる状態を作ることで、全体主義の台頭を防ぎ、従業員の成長によって次の経営者を生むことにも繋がると言っているのです。

ドラッカーから学べること

とてつもなく多くあると思います。

アメリカでは否定されることが多いようですが、日本などで長く尊敬されているのは哲学的であるからだと思います。

哲学は一朝一夕で理解できるものではありませんが、理解すると全てに通じるものだったり、あらゆるものに役立ったりする側面があります。

利益至上主義、株主至上主義、ブログやアフィリエイトなどで言うと収入至上主義ですかね。

それはもしかしたら、両輪ではなく片方のタイヤだけで走っているのかもしれません。

今回の本を通してドラッカーに興味が湧いてきたので、ドラッカーの著作も読みつつ幅広い視野で仕事やビジネスをしていこうと思います。

気になる方はぜひ読んでみてください。

経済合理的な判斷ができる人ほどハッとさせられるかもしれません。